前回、僕が案件獲得にエージェントを使っている話をしました。今回はその延長として、僕が自分のパフォーマンスを最大化するために行動していることについて話をします。
現在僕が仕事を請ける(業務委託なので「受ける」でなく、あえて「請ける」としています)案件には以下のような前提条件があります。
- フルリモートであること
- フルフレックスであること(或いはそれに準ずる柔軟な勤務が可能なこと)
- 私用 PC で作業可能なこと
- SIer が関わらないこと(商流のどこにも含まれていないこと)
- 準委任契約であること
上記を満たしたうえで、かつ僕のスキルセットがマッチする、或いは僕のスキルシートを確認したクライアントからお声がけいただいた案件の中からサービス内容、業務内容、金額などを選定したうえで応募させていただいております。
さて、上記をご覧になって、みなさんはどう感じるでしょうか。個人風情がムシのいい、或いは偉く威勢のいいこと言ってるなって思いますか。そう思う人がいても全く不思議なこともなければ、僕個人としても会社員の頃であれば、そんな人間とは口も聞かなかったでしょう。
僕の名誉(笑)のために断っておきますが、上記は人手不足で足元を見ている、とか自分に 100% 都合のよいことを言っているわけでは決してなく、冒頭に書いた通り、僕自身が最も高いパフォーマンスを発揮できる条件なのです。なぜ上記がパフォーマンスを高めるのか、各条件の背景について説明します。
フルリモートであること
僕は会社員 SE として横浜南部から都内へおよそ 10年通勤していました(往復 3時間)。満員電車で本を読んだり、仕事のアイディアをメモしていたため、通勤は有意義なものだと思っていたのですが、新型コロナの影響で在宅ワークになって気づきました。それは、自宅での学習の方が効率がよいうえ、仕事上のアイディアをすぐ試せるということです。そして通勤にかかる負担は無視できない、ということにも気づきました。満員電車はもちろんのこと、台風などの悪天候や電車遅延による負担は、やはり無駄な労力と言わざるを得ないでしょう。せっかくどこでも仕事ができる職種なのだからその恩恵を最大限利用し、通勤の体力を勉強や運動に充てることで更に効率よく業務が遂行できる、ということです。
よほど特殊な理由でもない限り、会社が SE を常駐させる理由はおおよそ、出社させないと仕事をしないのでないかという疑念です。また、在宅ワークにかかる諸経費を惜しんでいるということもあります。前者はそもそも素行を疑うような要員を雇うべきではないと思いますし、後者について、在宅ワークにかかる設備費用などは、交通費や作業の効率化によって数ヶ月程度でペイ可能です。
また、個人的には IT 業を営む会社が IT を活用していない時点で、刺身が嫌いな寿司屋さんを想像してしまいます。まったく説得力を感じません。世の中にはリモートワーク用のクラウドサービスを提供しながら、自社の社員には出社させているという面白い会社もあります。そういう会社さんとは距離を置かせていただいています。
ちなみに打合せや必要に応じた、或いは必要でなくとも単純なコミュニケーション目的の出社は喜んで引き受けます。言い換えれば、古い考えに固執して無駄なことをさせる会社かどうかの基準としている、ということになります。
フルフレックスであること
フルフレックスとは、一日決められた時間であれば始業終業時間を自分で決める勤務形態のことです。
僕は時間精算[1]時間精算:準委任契約であれば、例えば、月 140〜180時間の間であれば単価は変わらず、上下に出ると追加支給や控除となる契約が一般的というのが好きではありません。プロジェクトの立上げはどうしても高稼働になります。そのうえプロジェクトにはそれぞれ固有の問題があり、単純に比較できません。これまでの炎上経験から、危険察知能力は人並み以上に備えているため、他の人が感知できないようなことも先回りしてタスクを増やす傾向にあります。これは僕が常々意識し続けている予防の観点でも非常に重要な工程だと考えていますが、残念ながら、万人の理解を得ることは難しく、特に IT に暗いクライアントからは稼働が高く、追加料金が発生するため、コストパフォーマンスが悪く映るのです。
僕は新しいお客様には信用を得るため、時間をごまかして稼働を報告することがしばしばあります。定時に終業したことにして深夜残業、休日労働を行い、まずは目に見える成果を出し、信用を得たうえで、「これから稼働が高くなるので精算させてほしい」と申し出ると、それ以降は大抵の稼働は大目に見てもらえます。はじめはいわゆるタダ働きになりますが、これは必要な投資と理解しています。とはいえ、やはり初見ではこれを毎回する必要があるので、時間精算でなく月額固定としたいとは思うのですが、月額固定とすると案件に人が集まらないようで(SE は勤怠に問題がある人が多いため)、フリーランス界隈ではまず見つからないというのが現実です。
また、プログラミングにはいわゆるノッてるとき、というものがあります。無敵状態なので、そのコンディションのときに一気に進捗させたりしますが、そんなときに「定時になったから終了してください」なんて水を差されたら、末代まで呪うでしょう。プログラミングはこの状態を待つことが仕事と言っても過言ではありません。逆に集中できない日はさっさと引き上げて娘(犬)と遊んだりします。
グダグダと書きましたが、要は、どうしても稼働が上がるときはあるし、ノッていないときは茶を濁すことでよくなることがある、ということです。毎日 10:00 – 19:00 (休憩 1時間)と勤務時間が限定されると上記のような調整が難しくなります。
とは言っても平日の昼間はだいたい普通に働いてますけどね。これもフルリモートと同じで、企業の姿勢をみるひとつの基準だと思ってください。
私物 PC で作業可能なこと
体感としてこれが最もハードルが高いように思えます。プロジェクトの大半はクライアントかプライム(一次請け)企業が PC を貸与することが一般的です。企業が指定の PC で作業させたい理由はひとえにセキュリティの観点からです。個人 PC のセキュリティ対策はまちまちですし、個人 PC で作業して情報が漏洩した場合も、当然企業が責任を取ることになります。それを防ぎたいのは当然のことだと思います。
僕が私物 PC にこだわる理由は、自分の PC の方が慣れていて、スペックも高い、という非常に単純なものです。また、業務で利用する PC は Mac で、念のため、セキュリティソフトもインストールしているので、平均よりは強固なセキュリティだと思っています。Windows であっても企業が推奨するセキュリティソフトを導入させるだけでも充分だと思います。ヒューマンエラーに関してはプロジェクトのルールが強固であれば未然に防ぐことができますし、故意であればそれはそのような人材を採用した企業の目に問題ありです。
企業から貸与される PC はだいたい一世帯前の型の Windows PC で、安いセキュリティソフトを導入しており、起動してからカップ麺が出来上がるような待ち時間が発生します。プロジェクトによっては手垢まみれで変な打鍵感のするキーボードと、だらしない音のするマウスが付属されたりして、その時点でモチベーションが一度地に落ちます。そんなものを貸与しておいて、効率化とか革新的な技術とか言われても…と思うのが人情です。
そもそもプロジェクトのたびに PC が変わっては非効率です。マウスの形、キーボードのサイズ(なんなら配列すら異なる)が数ヶ月ごとに変わっていては効率が悪くて当然です。シーズンごとにグローブを変える野球選手がいないのと同じです。
SIer が関わらないこと
SIer の方、もしご覧でしたら、ごめんなさい。また、多くの方が SIer 関連の業務をされていることでしょう。僕が SIer のおかげで成長した側面も否定はしません。社会に必要なことも充分理解しています。
SIer は肌に合いません。その世界で僕は生きていけないことがわかったので、SIer を必要としない世界に生きると決めました。それだけのことです。
準委任契約であること
システム開発を契約する際には受託契約となります。受託契約には、準委任契約と請負契約があります。特徴は以下の通りです。
- 準委任契約:一定期間提供した労働に対し、対価を支払う契約
- 請負契約:決められた納期までに成果物を納品し、対価を支払う契約
準委任契約はサービス、請負契約は物理的な物が商材と捉えるとわかりやすいでしょう。請負契約の弊害は別の機会に論じますが、要点としては、
請負契約は顧客の要求で仕事は増えるが、対価も増えず、納期を厳守させられる
という事態が横行する、ということです。つまりほとんど炎上するということです。これは請負契約の性質上どうにもなりません。IT ベンダとしては請負契約のメリットはひとつもなく、エンジニアを非人道的に扱うことが法的に担保されます。悪法とかではなく不平等、請負契約はシステム開発には向いていない、ということです(発注側が圧倒的に有利)。そのようなプロジェクトに参画することは、地獄行きの片道列車に乗り込むことと同義です。亡き者になるか、鬼になるしかないでしょう。
また、僕との契約が準委任契約であってもクライアント(フリーランスから見て、エージェント経由で対価を払う企業)が請負契約で請けていないことも同様に重要な要因となります。クライアントが請負で請けていると、どこかのタイミングでまず間違いなく無茶を要求されるからです。
まともな仕事はまともな契約によって守られるということです。僕は戦争の訓練は受けてません。平和な世にあって、人の役に立って対価をいただく方法しか知りません。
ここでお伝えしたいのは、自分がパフォーマンスを上げるための不断の努力をしましょう、ということです。以前、業務開始段階で、地味に効率化するメソッドについて記載しましたが、今回はさらに大きな目線、実施する業務自体を選び、自分が最も活躍できる場所を選びましょうという話です。
僕自身も経験があることですが、世の中には個人の努力ではどうにもできない「肌に合わない環境や仕事」というものが間違いなく存在します。僕は「石の上にも三年」の精神で、合わない環境やそこで仕事を何年も遂行してきましたが、合わない環境や仕事は、その圧倒的な疲弊に対し得るところは少ないものです。その経験が度々活かされることはありますが、それにしても、もっと早く、1年でも1ヶ月でも早く、自分を最大化する環境選びをするべきだったと思っています。そのためにフリーランスになったと言っても差し支えありません。
脚注
↑1 | 時間精算:準委任契約であれば、例えば、月 140〜180時間の間であれば単価は変わらず、上下に出ると追加支給や控除となる契約が一般的 |
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