人間誰しも個人の努力ではどうにもならない不幸なことがあります。劣悪な家庭環境や先天性の病気などがその一例と言えます。僕の父は大変厳格で母や子供を厳しく叱責したり、ひどい場合は暴力を振るうことがありましたが、それほど頻繁に爆発するわけではありませんでした。経済的には中の中といった印象でしょうか。
また、母とふたりの兄がいるのですが、僕は年齢が離れていたこともあり、概ね優しかったと記憶しています。特に兄は友達のいない僕を連れて自身の友達と一緒に遊んで連れてくれました。まあ、正直イヤだったのですが、兄の優しさだったと思います。
というわけで家庭環境に大きな問題はなかったのですが、残念ながら先天性の疾患というのが幾つかあります。特に命にかかわるものではないのですが、人格形成に大きく影響しています。なんの役に立つかはわかりませんが、同じ病気(或いは体質)で悩んでいる人の慰めになればと思い、ここで公開します。
カフェイン抵抗が弱い
個人的に軽いものから順番に紹介を進めます。見出しの通り、僕はカフェインに対する抵抗が弱いです。逆に言うとカフェインが効きすぎる、ということになります。
過去にコーラの 1.5 リットルを買ったはいいけど、途中で飽きてしまってどう消化しようと考えたところ、ウィスキーに割って飲むことを思いつきました。少々甘すぎるなと思ったものの、味は悪くないのでそのまま呑んでいたのですが、いざ眠ろうとするとすっかり眠れなくなりました。そのときは眠れない理由がわからなかったのですが、後日コーラに含まれるカフェインが原因だと気付きました。
それ以前から夜にコーヒーを飲むと眠れなくなることはわかっていましたが、それよりわずかなカフェインが含まれるものであっても身体が反応することがわかりました。過去に僕の食事を公開する記事で、朝昼にコーヒーを飲むことをお伝えしましたが、16 時以降はコーヒーはもちろん、カフェインが含まれる飲料は飲まないようにしています。
尚、家内はカフェイン抵抗が非常に強く、寝る前にコーヒーを飲んでも熟睡することが可能です。これはこれで珍しい体質のようです。
耳かきでむせる
子供が親に耳かきをしてもらうことがあると思います。人によっては耳かきが気持ちよく、耳かきをしすぎてしまうことがあるようです。家内はこれで中耳炎になって爆笑したことがあるのですが、それはさておき、僕は耳かきをするとほぼ漏れなくむせます。
幼少の頃は母が定期的に僕ら兄弟の耳かきをするのですが、僕はいつも逃げ回っていました。ついには怒られて捕まり、何度も咳をしながら終わる頃には涙がボロボロ出ていました。家族を含め周囲には理解されず、人によっては演技だと思われていたかも知れません。
一定数このような体質の人がいることがわかったのは社会人になって同じ体質の人と出会ったためです。この症状を迷走神経反射といい、耳かきでむせる人の割合は日本人の 1 〜 2 割とされています。結構いますね。
家内はこれにはじめは驚いていましたが、程なくしてすっかり慣れてしまって、この反動として本当に風邪で咳をしていてもあまり心配してくれなくなりました。さびしいですね。
アトピー性皮膚炎
僕の幼少期を悪夢にしたのはこのアトピーです。症状はほとんど人がご存知の通りですので詳細は省略しますが、要するにちょー痒いです。冬の乾燥も厄介ですが、夏は本当に地獄です。現代のようにエアコンを一晩中使う習慣が当時はなかったので、夏の夜が何よりの地獄でした。多汗症もあって、とにかく汗も止まらず痒みも止まりません。一度掻いたら最後で血が出て痒みより痛みが勝るまで止められません。そのため、極力掻かないようにするのですが、あまりの痒いときは両腕を後ろに紐で縛ってもらって気絶するまで耐えるということが夏が終わるまで続きました。
毎年皮膚科に行って身体中包帯巻きになるも、蒸れるせいか寧ろ痒みは増して、結局気絶するまで眠れませんでした。根本的に症状が改善することはなかったため、僕が病院に対して不信を抱くようになりました。未だに病院不信で、とりわけ皮膚科はまったく信用していません。
ただ、症状の度合としてはそこまで深刻ではなく、兄は顔に出るくらいの重症でしたが、僕は首を見なければわからない程度でした。学生で同じアトピーの友達がいるとお互いに「掻くな!」と声を掛け合うのが日課となっていました。
また、アトピーによって入浴の習慣が強化され、夏の間は 1 日 2 回以上シャワーを浴びますし、年間通しても入浴しない日はありません。どれほど泥酔して帰宅してもシャワーは浴びます。実家を出てひとり暮らしをしていた家が、湯沸かし器がないタイプの浴室だったのですが、週に最低 2 回はお湯を張って入浴していました。
40 歳を過ぎた今では食事を改善したこともあって、重篤な痒みに悩まされることはなくなりましたが、未だに無意識のうちに掻きだすと止まらなくなることはあります。
キウイアレルギー
簡単に回避できるものの、僕の体質で唯一命にかかわるのがキウイアレルギーです。
食べられなくなるまで大好きだったキウイですが、幼い頃から食べると喉が痒くなっていました。山芋やナスなどほかの食べ物でも似たような症状が出ることがあったため、特に気にすることはなかったのですが、30 歳を過ぎたある日、家内の実家から送られてきたキウイを食べた際に痒みでなく、喉が熱くなる感覚を覚えました。その直後に喉が腫れるような感覚があり、呼吸が苦しくなり、すぐに呼吸ができなくなりました。パニックになって悶えていたのですが、しばらくするとおさまり、無事呼吸ができるようになりました。
どこかで聞いた重篤なアレルギー症状と同じだったのですぐにアレルギーとわかって、食べるのをやめました。これ以来キウイを口にすることはなくなりましたが、「キウイ味の XX」も怖くて口にできません。若い頃は問題なくても後天的にアレルギーが発症することがあるそうです。花粉症と同じ原理かと勝手に想像しています。
尚、キウイはフルーツアレルギーの発症率は No.1 だそうです。
WPW 症候群
医師以外で WPW(ウォルフ・パーキンソン・ホワイト)症候群を知っている人に出会ったことはありませんので、何の役にも立たないと思いますが一応説明します。ちょっと複雑で正直よくわかっていないのですが、ごくごく端的述べると、不整脈の原因となる心臓の病気で、健常者の心臓が血液の導線がひとつであることに対し、WPW 症候群では血液の導線が余分にもうひとつ存在し、そのことによって突発的な激しい動悸が発生するというものです。1,000 人に 2 〜 3 人とされる先天性の疾患ですが、命にかかわることはまずないとされています。
幼い頃から健康診断の心電図で必ず要検査となり、その度に狭心症(こちらのほうが命の危険度が高い)と診断されていて、しばらく授業を休むことがありました。後日追加検査をして症状が出なかったりしていたので、経過観察となりそれが社会人になっても続きました。
それが 30 代後半になってその謎の症状がどうやら WPW 症候群であると晴れて(?)診断されるに至りました。最初は「だぶ、だぶる、なんだって?」って思ったのですが、もしかしたら最近まで WPW 症候群が医学会でメジャーでなかったのかもしれません。今では心電図の前に「WPW 症候群です!」とドヤ顔で言うことで再検査とならずに済んでいます。
この病気で困るのはまったく予期せずに動悸が起こることです。仕事中、就寝中でもお構いなしです。動悸がするとやはり気が散るし、根拠のない焦りを感じたりします。また、僕は耳栓をして寝ているのですが、明け方に症状が出ると心臓の音がうるさくて目を覚ますことがあるので、耳栓を外してしまうことがあります。
先述の通り、命にかかわる病気ではないため、普段気をつけることはないのですが、事故などで救急搬送されたり手術をする場合は WPW 症候群であることを医師に伝える必要があるようです。もし近親者で WPW 症候群の方がいらっしゃる場合はご注意ください。
HSS 型 HSP
僕がどのコミュニティにも属せず、最終的にひとりで活動している原因がこの HSS 型 HSP という体質です。まず HSP というのは Highly Sensitive Person の略で先天的に繊細な性質をもったひとのことで、以下の特徴があてはまります。
- 些細なことに気づく
- 音や光、匂いなどの刺激を受けやすい
- 共感力が高い
- 深く考えすぎる
- 自己肯定感が低い
武田友紀さんが 2018 年に出版した「『繊細さん』の本」で一気に HSP が世間で認知されるようになりましたが、人口の 20%(5 人にひとり)は HSP とされています。人の顔色を伺い、人の言葉の裏を読みます。ないはずの悪意を感じたりして落ち込んだりすることも多々あります。
加えて HSP には HSS 型 HSP という分類があり、僕はこれに該当します。HSP でありながら HSS 型の特性を持つ、ということです。
HSS とは High Sensation Seeking の略で、「刺激探究型」と訳されます。名前の通り、刺激(快楽)を強く求める傾向があり、そのほかには以下の特徴があります。
- 新しいものに興味を示す
- 行動力がある
- 初対面でも打ち解けやすい
HSP のうち HSS 型 HSP は 30% とされ、HSS 型 HSP は人口の 6% とされています。逆に言えば日本人のうち HSS 型 HSP は 600 万人以上いるということで驚きです。
HSS 型 HSP は HSS 型の特徴がありながらも HSP の性質があるため、傷つきやすいくせに刺激を求めるという矛盾を抱えています。無印 HSP は内向的な傾向がありますが、HSS 型 HSP は一見外交的なため繊細に見えず、性格を誤認されることが多々あります。
好奇心が強いため思考が止まらず、基本的に頭はフル回転です。人付き合いが得意ではないのですが、積極的に人と交流して疲弊したりします。思い立ったらすぐ行動なので、外出中に家族とはぐれることがしばしばあり、あとで後悔することもあります。こういった特性を多くの人が「車のアクセルとブレーキを目いっぱい同時に踏む行為」に例えています。
ADHD(多動症)と似た性質があるため混合されがちですが、ADHD の特徴に「時間が守れない」というものがあります。僕は時間厳守主義なので、ADHD にはあてはまりません。
ここまでで HSS 型 HSP の特徴について説明してきましたが、僕にもすべてがあてはまります。その中で僕個人固有の性質について紹介していきます。
- 音や光に敏感
- 慢性的な寝不足
- 嗜好品を好む
- 味が極端に濃い、或いは薄い食べ物を好む
- 芸術に過剰反応する
- 知らない人に話しかけられる
音や光に敏感
これは HSP の一般的な特徴でもありますが、僕はとりわけ音に敏感です。大きな音を聴くとビクッとなって不快なので、大きな音が出る車やバイク、電車(特に貨物列車)が生理的に苦手で、同じ理由でお子さんも苦手です。声が大きい人も生理的に苦手です。外出するときには AirPods は必須で、寝るときには耳栓をしています。天気が悪くても気になりませんが、風が強い日は機嫌が悪いです。
光には音ほど敏感ではないのですが、眩しいのが不快で、昼間出歩くときはサングラスは欠かせません。家の電気も電球色で統一しています。
慢性的な寝不足
音や光に敏感なため、耳栓をつけ忘れたり、カーテンに隙間が空いていると早朝に目が覚めてそのまま眠れなくなることがよくあります。また、HSS 型 HSP の特徴として思考が止まらない、細かいことが気になるといった特徴があるため、問題を抱えているとそれが気になって目覚めることがあります。
結果として寝付きが悪いうえ、些細なことで目が覚めてしまいます。昼寝をすることもできませんので、体調にもよりますが、週の半分は「眠いけど眠れない」という状況です。
嗜好品を好む
若い頃は酒、タバコ、ゲーム、ギャンブル中毒でした。現在は時間が取れないこともあってゲームをする時間はだいぶ削減されていて、ギャンブルはスロットが好きだったのですが、時間を取ることに加えて負けたときの自己肯定感暴落に耐えられないためやらないことにしています。
タバコは現在電子を利用してますが、それ以前は自分でタバコ葉を紙で巻いてました。今でも自分で巻いたタバコが最も好みです。何でも突き詰めてしまうのもよくないと思います。
酒については毎日晩酌をしますが、特にビール・日本酒を好んで呑みます。だからなんだということはなく、酔いたいと言うより味が好きだから呑むわけですが、入眠も促されるため一石二鳥です。但し、飲酒による入眠は睡眠の質を下げるので注意が必要です。
味が極端に濃い、或いは薄い食べ物を好む
HSS 型 HSP は刺激を求めるため、嗜好品を好みますが、食事による刺激も好みます。例えば、特盛のカレーやステーキ、二郎系ラーメンなど味の濃い食べ物が好きな傾向にあります。
反対に繊細な味を楽しむことも好きで、素材の味を堪能したい場合は調味料は控えめにしています。僕はサラダにドレッシングは使わず、オリーブオイルと塩を振りますし、寿司に醤油を使いません。あまり口にはしませんが、揚物にも調味料をつけないことがしばしばあります(タルタルがついたら仕方なし)。また、甘味が強調された食べ物が苦手で基本的にスイーツや過度に甘いフルーツは口にしません。
芸術に過剰反応する
幼少の頃から音楽が好きで、ロックやポップスが特に好みです。The Beatles から始まって、おもに 60 年代以降のロックやポップスが好きなのですが、様々なアーティストに精通していると言うよりは、ハマったアーティストを深堀りして、そうでない場合は代表作やベスト盤に留まります。
業務中に音楽を流すことが多いのですが、独立後にハマったアーティストで例をあげると、D.A.N や Temparay などで、つい最近ではサニーデイ・サービスばかり聴いている、といった具合です。
モチベーション対策用楽曲を幾つも持っていて、気持ちが乗らない場合はそれらを流してモチベーションの維持を促します。曲によっては確実に涙腺が緩むものもあり、心が疲れていると感じている場合はそれらを流して心をデトックスします。代表的な楽曲は以下の通りです。
- The Beatles: Abbey Road 組曲(#9 – 16)
- The Beach Boys: Surf’s up
- Pink Floyd: Echoes
- 電気グルーヴ: 虹
- フィッシュマンズ: Long Seasons
また、大学生で映画にハマったのですが、ハマった映画がマイナーだったため古い映画やマニアックな映画ばかり観てきました。逆にメジャーな映画を通っていないため、40 歳くらいからあわてて観直すことになりました。尚、映画を観て泣くことは少ないですが、感動のあまり鑑賞後呆然とすることがしばしばあります。また音楽と同様に気に入った映画を繰り返し視聴することが多いです。あまりにも繰り返して観る作品は新しい作品に出合う機会を奪うため、閲覧禁止令を自分に課すこともあります。
逆にガチの芸術は理解できません。クラシックやジャズには興味がなく、絵画などはそれほど興味がありません。手早く理解できるものかシュールなものが好みだったりします。
知らない人に話しかけられる
HSS 型 HSP の頭の中は常に台風状態なのですが、それとは裏腹に平和主義でもあるため、見た目は温厚そうに見えるのかもしれません。
僕は身体が大きく、目つきも悪いのですが、なぜか知らない人に話しかけられる機会が多いです。お年寄りからお子さん、外国人までそのバリエーションは様々です。これが HSS 型 HSP とどれほどの関係があるかわかりませんが、僕の性格が HSS 型 HSP をベースに形成されている以上、少しは関係があるかと思います。
これまで僕自身固有の特徴をお伝えしましたが、HSP および HSS 型 HSP の特性は多くの場合、本人を苦しめるものとなります。繰り返しになりますが、HSP は病気でなく体質であるため、治療は不可能とのことです。HSP という言葉を知る以前、僕は自分の性格をなんとか治したいと考え、運動、サウナ、マインドフルネス、瞑想など色々と試しましたが効果はありませんでした。こんな性格を強いるものが治療不可能なら体質でなく寧ろ呪いと思います。
生活の半分以上が痛みや不快感の毎日です。快楽に対する感度も高いのは事実ですが、そんなものはいらないから日常の地獄をなんとかしてほしいと思っています。
「つらくて死にたい、でも死んだら家族に迷惑かかるからやめとくか」
そんな気持ちで生きているので、基本的に毎日が苦痛です。仕事や趣味など打ち込めるものを探しながら毎日をやり過ごしています。
HSP および HSS 型 HSP を紹介して養護するような配信をしている人もいて、そのような配信を観て自己肯定感を上げることもあります。しかしながら、それらの配信者がなんと言おうとこの体質は苦痛が圧勝です。何かに対する罰なのかわかりません。
以上、不幸自慢になりますが、先天的に重篤な病気を抱える人と比べたらだいぶマシだとは思います。少なくとも家族の世話は必要ないし、周囲から同情を買うこともありません。そもそも治療ができないので、治療費も必要ありません。
それはそれとして当の本人からすると、ちょっとした病気や体質の違いはそれなりに苦労があるものです。幼少の頃から周囲をみていて「なんでこの人たちはこんなに無神経なのだろう」と思いながら過ごしていました。今ではこの性格を業務に活かしてますので、なんとも複雑な気持ちです。
同じ病気や体質の人は動画のほうにコメントをお願いします!