技術

学歴とエンジニア

学歴とエンジニアリングの能力についてお話します。できれば高学歴の悪口を言い続けるような内容にしたかったのですが、やはりそんな単純なものでもなく、学歴を切り口に社会の本質を考えるような内容になっていますので、どんな学歴であっても最後まで楽しんでいってください!

投稿者の学歴

学歴とエンジニアの能力について因果関係はあると思いますか?学歴というセンシティブな話題を扱う以上、僕自身の学歴をまずお伝えしておくと、小中学校はその地域に住んでいれば誰でも入学できる公立学校、卒業生には都立大の木村草太教授がいますが、そんなものはただの偶然です。高校は中くらいのこれまた公立高校、漫画「恋は雨上がりのように」の舞台となったようですが、そんなものはただの偶然です。僕が卒業して偏差値が上がったようですが、そんなのは僕の能力とは関係ありません。

問題の大学ですが、この記事を執筆するにあたり、改めて偏差値を調べたのですが、F ランクに限りなく近い D ランクだそうです。F ランクだと決めてかかっていたので、なんとも微妙な気分です。そしてそんな大学を僕は 3 年通ったあげくに中退しています。中退した原因は周囲と馴染めなかったことで 1 年生の時点でほぼ不登校、2 年生からは心を入れ替えて登校していたのですが、3 年生を終える頃には我慢の限界を超えました。春休みに入るや否や、父に土下座して辞めさせてもらうようにお願いしました。誰かに土下座をしたのは多分あれが最初で最後だったと思います。父は厳格[1]兄がふたりいるのですが、僕も含めて学生までは全員敬語で話していました。仕事柄家を空けることが多かった次男は未だに敬語を使っています。で大学は卒業して当然という思想だったのですが、意外とあっさり承諾したものの、数ヶ月は口を聞いてもらえなかったと記憶しています。

つまり学歴としては大学中退=高卒です。YouTube の動画末尾で「IQ 8、偏差値 12」と言っているのは自分の学問の不出来を自嘲するもので、かと言って特別な才能がないことを表現しています。(自分程度のことは誰でもできますよ〜って意味)

こんなご時世なので、「何だよ、こいつ高卒かよ、もう読むの(観るの)やめよ!」ってなる人も少ないと思うので、昔よりはだいぶ大っぴらに学歴が言えるようになりました。時間と金銭に余裕があっても大学に通い直したいとは全く思いませんが、自分が学生に向いていないことが分かっただけでもマシだと思っています。ただただ両親に申し訳ないとは思います。(後々、会社員にすら向いていないことにも気付くのですが、それはまた別の話)

いずれにせよ、40 歳も超えて学歴がどうとか同期がどうとか言ったり、自分がとっくにいなくなった学校に入学した人を後輩扱いしたり、そんな気色の悪い人間にならずにも済んだのでそこはポジティブに考えようと思います。

さて、僕がなかなかの低学歴だと理解していただいたうえで何を話すのかというと、学歴とエンジニアリングの優劣の因果関係についてです。システム開発というのはある意味とても平等な世界で、特に大規模システムであれば高学歴の社員を抱えたユーザ企業や SIer と、概ね高学歴でない社員を抱えた IT ベンダやフリーランスが一緒に仕事をします。

なので、低学歴であっても IT 業界における学歴とエンジニアの関係性についてある程度は経験で論じることができる、ということになります。

想像できると思いますが、まず結論としては「学歴とエンジニアとしての能力は関係ない。但し、予め職業訓練を目的とした就学は除く」ということになります。

入口は学歴が物を言う

多くの会社、とりわけ大企業では新卒であれば高専卒以上でないと応募資格に満たない求人が多いようです。例えば任天堂や Microsoft は高専卒以上ですが、DeNA や CyberAgent は学歴を募集資格として規定していませんでした(インターンシップが多い)。単純に文化の違いかと思いますが、同じ大企業でもメーカかメガベンチャーの違いもあるかと思います。尚、Apple や Amazon についてはエンジニアの国内新卒募集は見つかりませんでした。(販売などの職種メイン)

そのほかの大企業の新卒採用ですが、相変わらず大卒以上が応募資格のようです。但し、大企業の中でも専門卒も対象としている企業もあるようです。例えば LINE Yahoo は学歴不問(!)、NTT Data、Softbank は高専卒以上、NRI、楽天は大卒以上となっています。

尚、上記のような大企業、メガベンチャーの採用基準は大変厳しく、募集要項を満たしたうえで厳しい試験や面接をクリアする必要があるようです(他人事)。難関大学を合格することとは別の能力、より実践的な能力が問われるとのことでした(他人事)。

逆に中小企業であれば高卒以上の企業もありますが、実態としては情報系の専門学校を卒業しているか大卒を対象としている企業も少なくありません。高卒で選考を受ける場合ポートフォリオなど実績が明確である必要があるかと思います。

ちなみに教育体制がおおよそ整っていない中小企業でも積極的に新卒を採用するのは助成金があるためです。助成金によって諸経費を浮かすことが可能で、そのうえ社員が増え、利益が増えるためメリットが多いとされています。但し、実態としては、まともな教育制度がない、宇宙人を入社させる、負荷が高まった教育者の退職する、などで、社員の二極化を招いている企業をいくつか見てきました(投稿者自身の会社も同様)。一概には言えませんが、就職や転職で「中堅層が少ない」と嘆く会社は基本的に教育制度が整っていない、或いは評価制度に問題があり、結果として 20 代後半から30 代の社員が退職する(つまり何も知らない若者かほかに行けない中年が残る)傾向にあることを覚えておきましょう。

学歴に話を戻しますが、いずれにしても新卒であれば学歴が物を言うという結論で間違いはなさそうです。業務実績のない学生では企業が判断できる基準が卒業した学校と本人のおおよその人柄くらいなもので、あとはろくでもない変なテストで地頭を測定するくらいです。
但し、大企業やメガベンチャーへの就職は学生の頃に目でわかるような実績や、会社の業務で発揮できる定量的な能力を学生のうちから磨いておく必要がありそうです。従って、最初から大企業やメガベンチャーを狙う人は結果として学歴は必須といえるかもしれません。

補足すると、優秀な学生はそのような大企業に入ることでなく、起業する道を選ぶ人も少なくありません。大企業に就職すると会社のコントロールはまず効かず、(安全と引き換えに)誰かが作った仕組みの制約のなかで仕事をすることになるので、これをよしとせず、自分で会社を作るべく、学生のうちから起業するケースです。或いは新卒としてひとまず大企業に入社して数年でノウハウを吸収して起業するケースもあります。僕のクライアントはこのような会社さんが多いです。

中途採用における学歴

中途採用(業務実績 5 年以上)でエンジニアとして転職する際に学歴を問われることはありませんたぶん)。大企業であればもともと大企業に務めていた人を欲しがることはあるでしょうし、イノベーションを考えている企業であれば風通しをよくするために中小企業で実績のある人材を採用することもあるかもしれません。

中小企業であれば、務めていた会社よりプロジェクトでどのような実績があるか、が重視されます。たまに自分が大企業出身でもないのに出身企業の大小を気にするオッサンがいますが、それは別として基本的には実績と本人の人間性が評価されます。

僕が企業の採用をお手伝いした際、確認するのはスキルシート(エンジニアとしての職務経歴書)で直近所属していたプロジェクトで何をしていたか、です。丁寧に学歴の記載があったり、履歴書が添付されたら一応読みますが、本人の印象は変わりません。「いい大学出てるなぁ」とかは思いますが。

これは学生と違って実績がある状態なので、それをもとに選定することになるということです。あとは企業の採用基準を満たしているか口頭で確認する、それだけの話です。

フリーランスにおける学歴

中途採用で学歴の意義がだいぶ薄れてきましたが、フリーランス(個人への業務委託)の世界で言えばもうなおさら、学歴はほとんど意味を失うことになります。他人の学歴なんか話題にもなりませんし、フリーランス向けの求人票に学歴の欄は見たことがありません

フリーランスに期待されることは「システムに関する課題を解決すること」以外にないので、何よりも実績が最優先、あとは最低限のモラルがあって、チームの和を乱すことさえなければ、宇宙人でも恐竜でもパグでも構わない、というのが業務委託の世界です。

それじゃ結局学歴ってどうなのよ?

学歴が人格の上下を表現しないように、エンジニアリングの優劣にも影響しません。先ほどみてきたように、学生のうちからエンジニアリングをするために高度な教育を受けた人は別ですが、多くのエンジニアが文系の大学や高校の普通科を卒業しています。

僕は学歴も人格も下劣ですが、仕事の能力は中の上くらいはあるようで、まあまあ仕事はいただける状態にあります。これまで出会った特段優秀なエンジニアは高卒が多く、優秀とされる大学を卒業したエンジニアは優秀な人とそうでない人が極端な印象です。高学歴だとコミュニケーションの面で難がある人を見かける一方で、学生からの勤勉さを業務でも発揮できる人もいます
ちなみに僕が学歴を気にしない(気にする資格がない)のもありますが、高専卒、専門卒のエンジニアは相対的にかなり少ない印象でなんとも言えません。

なのでこれらの情報から推測すると、結局人による、という身も蓋もない結論になりそうです。「エンジニア 30 歳定年説」でも話をした通り、結局能力の云々は本人の意識次第ではないかと思います。過去がどうあれ頑張る人は頑張るし、毎日定時になるのを手ぐすね引いて待っている人はいつまでも成長しない、ということです。当たり前のことですが。

そもそも学歴とか就職先とか家柄だけで仕事の優劣を判断するのは無理ですよね、普通に考えて。多少目安くらいにはなるかもしれませんが、人間は周囲の環境次第でどうとでも転がるし、性格も全員違うので、外部情報でなんでも決めつけてしまうっていうのはなんとも乱暴ですよね。こういう何でも色眼鏡でみる風習が根絶されるといいなぁ、とこの記事を書いてて思いました。

まとめ

本ブログのコンセプトとして「役に立つ」を最優先として、例え役に立たなかったとしても「単純に楽しめる」ということに気を付けています。

ここまでご覧になっていただけると今回の内容は「大卒や高学歴を腐す」ことでなく「たまたま学校教育が肌に合わなくて、学生の頃に実績を残せなかったにしても、社会人になってから充分に巻き返しが可能」ということをお伝えするものです。エンジニアという職種は一例で、結局のところどう社会で生きていくかは自分の意思で選択可能だということです。

人生 100 年時代と呼ばれる現代において、生まれて最初の 20 年程度でその後の人生が決まってしまうというのは社会としてあまりに思いやりがなさ過ぎます。戦後ならいざ知らず、人のありようが多様化している現代では、努力次第で、いろいろなところに自分にふさわしい場所が提供されています。「人格の優劣はその人の行った行動の積み重ねである」と誰かが言ってた気がしますが、満たされない現状を「学歴がないから」とか「実績がないから」と諦めることなく、できるだけ早く行動したほうが精神衛生上よいと思いませんか?

僕は 27 歳でエンジニアになったため、経歴の見栄えが悪く、30 代まで大半を炎上プロジェクトで過ごすことになります。平和なプロジェクトでも数ヶ月単位で異動となったため、約 18 年のキャリアで 26 のプロジェクトに携わってきました。これは平均するとひとつのプロジェクトに 8 ヶ月しか在籍していないことになります。統計を取ったわけではありませんが、これは相当短い期間だと思います。
フリーランスになってからは自ら退室を申し出たこともありますが、それ以外は会社都合、或いは顧客都合によるものです。利用したスキルもバラバラ、得意分野というものも特にありません。
こういう経歴だとジョブホッパー[2]ジョブホッパー:転職を繰り返す人ならぬ、プロジェクトホッパーと受け止められ、「人格か勤怠に問題があって追い出された」或いは「堪え性がなくて逃げ続けた」と捉えられるようです。フリーランスとなった現在でも書類選考での落選率は相当なものです。
しかしながら、こういった経歴を「適応能力が高い。知見が広い」と捉えてくれる顧客も一定数いるもので、基本的にそのような企業さんから仕事をいただいています。それらの企業さんはだいたい若い会社で代表は高学歴な人ばかりです。(なんとも皮肉な話です)

捨てる神あれば拾う神あり、と言ったところでしょうか。過去がどうあれ根気よく取り組むことで何かしらの解決策はあると考えています。この話が閉塞感に悩まされる人のヒントになればよいのですが。

追伸:本当は低学歴の経営者の話をするつもりだったのですが、大幅に発散しそうだったのでカットしました。また機会があれば、ということで。

脚注

脚注
1 兄がふたりいるのですが、僕も含めて学生までは全員敬語で話していました。仕事柄家を空けることが多かった次男は未だに敬語を使っています。
2 ジョブホッパー:転職を繰り返す人
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yo
フリーランス、システムエンジニア。 営業・販売、肉体労働などを経て 2007年から IT 業界に従事。文系出身かつ未経験者のため立上りに大変な時間と労力を要する。 新規システム開発を提案から設計・実装・保守・運用まですべての工程を担当する(実装は主にサーバサイド)。その傍ら、他業種・他職種の経験や上記立上りの経験を活かし、教育や業務標準化など、組織の育成に勤む。 私立大学現役合格、現役中退。基本情報・応用情報技術者取得、高度試験はモチベーション確保という観点から見送り。普通免許ゴールド保持者。 趣味は犬。