準備 8 割という言葉があります。何かをなし得るには準備が 8 割、実行が 2 割であるという考えです。
例えばあなたが転職・就職して PC が貸与されたとします。まずは何をしますか?必要なソフトをインストールしたり、認証の設定をする?はい、そうですね、正解!なのですが、それではまだ足りないのであります。自宅の PC でも同様ですが、PC を使う前提として PC が最も高いパフォーマンスで業務をすることが重要です。以前数秒単位の業務効率化を図り、重要なことに注力するのが望ましいということを書きましたが、今回はその続きだと思ってください。
PC を使っていて、充分なパフォーマンスを発揮するための設定ですが、実は詳細についてうまくまとめている記事というのはすでにいくつも存在します。「windows(mac) 設定 おすすめ」や「windows(mac) ショートカット おすすめ」などをキーに検索してみてください。ということで、ここでは具体的な手順でなく、メソッドというか、概要を記載致します。
- スペックの高いマシンを使う
- 自分の合うキーボード、マウスを使う
- 不要なアプリケーションは削除する
- 不要な機能を OFF にする
- ショートカットを使う(キーボードで操作する)
- 頻度の高い操作をツールで簡略化する
- タイピングを強化する
個別に解説します。
スペックの高いマシンを使う
会社に貸与される場合だと選べませんが、自宅用に購入する場合、その用途によって購入するスペックを選びましょう。メールやチャット、SNS 中心に使う方は高いスペックである必要はありません。メーカが推奨するスタンダードなモデルで充分です。
一方で、これからプログラミングや動画編集などをはじめようと思う方は無理のない範囲で高スペックなものにしましょう。Mac なら MacBook Pro 、Windows ならメーカ推奨のプロモデルにしましょう。作業効率がよいということは勉強効率もよくなることを念頭に置いておきましょう。ちなみに、iPhone、iPad のアプリを作るには Mac が必須です。
また、今後複業や独立を検討されている方は私物の PC はデスクトップでなくノート PC を選択することをおすすめします。移動中や外出先で作業できるのと、以前と比べてノート PC のスペックはデスクトップに充分対抗できるためです。
ストレージ(いわゆるハードディスク)は用途にもよりますが、まずは SSD にしましょう。速度が段違いです。容量については 512 GBで充分でしょう。今はストレージサービスも安価なので、動画収集などで足りなくなったらそちらに預けるのがよいでしょう。外付けでもよいのですが、場所も取るし、結構壊れます。
ちなみに IT 企業で低スペックな PC(7, 8年以上前のスタンダードモデル)が貸与されたら冗談抜きで転職活動を始めましょう。一般的に PC の購買担当はその会社の要職であり、その人物が PC に疎いとか、ケチるのは致命的です。ここでは詳しく言及しませんが、ライオン狩りに挑もうとしているのにお玉とフライパンを支給されるようなものです。
自分に合うキーボード、マウスを使う
これは文字通りで、特にデスクトップについてはキーボード、マウスの使い回しが多いのですが、できれば自分に合うものを探して使いましょう。ノート PC も同様にサブモニタを使って、キーボードも外付けしましょう。そもそも、手の長さ、指の長さ、打鍵の間隔やキーの深さなどは人それぞれ好みがあり、統一させるほうが無理があります。自分に何が合っているか、電気屋さんへ行って実際に触ってみて試しましょう。(キーボードを選んでるときがまた楽しいですよねぇ)
不要なアプリケーションを削除する
これは Windows に多いのですが、頼んでもいないのに初期購入時点でおびただしい数のアプリケーションがインストールされています。会社で貸与された PC にゲームが入っていても遊ぶ時間がありません。これらのアプリケーションが存在することで、使いたいアプリケーションを探すのに手間だったり、そもそも容量を使います。家に知らない人がいるけど無害、そういう状態です。お帰りいただきましょう。
不要な機能を OFF にする
これも Windows に多いのですが、初期状態だと自動バックアップなどが勝手に動作したりして動作が重くなっています。無効にする方法があるので、調べて無効にしましょう。
ショートカットを使う(キーボードで操作する)
いわゆるコピペ(Windows:ctrl + c → ctrl + v、Mac:cmd + c → cmd + v)など、マウスを使わずキーボードでコマンドを操作することです。これは OS を操作しているときとアプリケーションで共通するものも多いです。例えば、全選択(Windows:ctrl + a、Mac:cmd + a)や検索(Windows:ctrl + f、Mac:cmd + f)などはテキストエディタや Excel でも共通です。どんなショートカットがあるのか一通り調べてみて、特に頻度の高いものは使って慣れましょう。また、ショートカットでなくても、ブラウザで入力フォームを tab で移動したり、ログインフォームで Enter ボタンを押すとフォームボタンを押すのと同様になります。Windows:alt + tab、Mac:cmd + tab でウィンドウの切り替えが可能ですが、これも高頻度で使えます。極力キーボードを使うことで省力化しましょう(ちょっとかっこよくみえる)。
頻度の高い操作をツールで簡略化する
ショートカットに近いのですが、こちらはもう少しコストがかかります。例えば、クリップボードなどがよい例です。Windows には win + v でこれまでコピーした一覧が表示され、選択することで再度コピーされるのですが、これが重くて使いづらいです。かたや Mac にはもともとそのような機能はありません。いずれも専用のクリップボードツールをインストールすることで快適になります。特に頻度の高いものは予め登録することができますので、アカウント名やパスワードを登録することでログインなどが楽になります。自分が行う操作で不便を感じる場合は調べて使ってみましょう。Windows を長く使っていた僕にとっては Mac の cmd + tab はアプリケーション単位での切り替えしかできないため、アプリを入れてウィンドウ単位で切り替えができるようにしています。
また、日本語の変換機能にも幾つか種類があるので試してみるのがオススメです。特に Mac にデフォルトで搭載されている変換機能は絶望的です。何度変換しても上位にならない、人名などは変換できないもの多数、といった有様です。僕は Mac 歴がそれほど長くはないですが、これだけでジョブズの人間性を疑ったほどです。絶対に変えましょう。
タイピングを強化する
こちらは最も時間を要するのですが、PC で業務を行う以上、タイピングのスピードは即ち業務のスピードに直結します。Web のサービスを利用するなどしてタイピングのスピードを上げましょう。僕もあまり早い方ではないのですが、コツとしては速度より精度です。早くてもタイポ[1]タイポ(typo):打ち間違えのこと。type を typo と打ち間違えたことが語源だが諸説ありがあっては使えません、結局修正する時間がかかってしまいます。速度はあとから付いてきますのでまずは丁寧なタイピングを心がけましょう。
ただ、一点注意なのが、プログラマが全員タイピングがちょー早いということはありません。プログラミングは考えている時間が長く、 IDE の補完機能も使うし、普段使うチャットほどのタイピングをするようなことは稀です。タイピングサービスでものすごい高得点を取るまでやり込むひとがたまにいますが、キーボードを見ずに感覚的にタイピングできるようになればそれ以上の訓練は不要です。楽しいと思ったら極めるのもよいですが、優秀なプログラマ=爆速タイピングとはなりませんのでご注意ください。
上記はいずれも導入にコスト(ここでは料金でなく時間)がかかります。それでもこれから何十年にわたって PC を使って仕事をすることを考えると充分なペイがあります。数秒の積み重ねは侮ってはいけません。そして、このような効率化を常に意識すること、現状に満足することなく考えるという意味で仕事に対する向き合い方も異なってくるのではないでしょうか。仕事にしても何にしてもなんとなくこなしていては前進しません。8 割の準備は業務開始前にしておくものです。今からでも遅くないので、ちょっとした隙間時間で試してみましょう。
仕事の効率が上がると仕事が楽しくなります。スポーツでも何でも、うまくなったほうが楽しいですよね。
最後に、キーボード、マウスが持込みできない、好きなアプリケーション(問題がない前提)がインストールできない、といった環境で、かつそこに満足していない場合も転職活動を始めましょう。SIer に多いのですが、セキュリティ要件として、機器の持込み禁止や決まったアプリケーションしかインストールできないというプロジェクトが未だに多く存在します。そしてそれらの規則は概ね IT の知見がない人が何十年も前に作ったものです。そんなものに縛られてるようなプロジェクトはエンジニアを世間知らずにするうえ、リスクを気にしすぎて改善するという土壌が育ちません。だいたいキーボードからウィルス感染した事例など聞いたことありません。好きなキーボードとマウスで気持ちよくしたいものですねぇ。
尚、システム作りも準備 8 割の考えがあります。寧ろシステム作りの方が重要、というかこれがないと致命的なんですよね。それはまた別の機会にでも。
脚注
↑1 | タイポ(typo):打ち間違えのこと。type を typo と打ち間違えたことが語源だが諸説あり |
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