フリーランス

転職と独立-消極的帰結

前回まで僕が IT 営業に異動して経営の実態を目の当たりにしたうえで、営業から SE に戻ったところまでお話しました。

僕が転職を考えたのは、SE に戻って 2年目にプロジェクトで大きなトラブルがあったためです。このトラブルに関してはすべて僕の責任…と納得するにはだいぶ抵抗があるのですが、不徳の致すところであることは認めざるを得ないでしょう。とにかくそのことで出世コースから脱落し(50名規模の会社で…)、僕はなんとも微妙なポジションに収まることになりました。マネージャでもリーダでもメンバでもない、しかし社内業務のほとんどを遂行できるという、なんとも言えないポジションです。僕一人で顧客の要件を聞いて、見積を出して、契約書類を提出して、開発して納品する、各決裁だけは上司を通す、という状態になりました。こうなると自由のない自営業状態です。そう、会社側からすると、なんでもできるが、人格に難がある、という評価です。このような上層からシカト状態で在籍し続けられるほど、僕は厚顔無恥ではありません。当然転職を検討することになりました。(会社や社員への貢献を最優先事項として 7年やってきましたが、最終的にはそんなもんです。我ながら情けなくて笑っちゃいますね)

そんなところ、ほかのチームでトラブルが起きて、そのことで新入社員がとばっちりを受けて僕の配下に異動することになりました。要するに面倒をみる社員がいなくなった新人を押し付けられた、ということです。僕はこの時点で転職することを決めてたので、新人が不憫に思えたのですが、程なく、会社への最後の忠誠として(とか言ってる時点で古臭いのですが)、その新入社員へ全力で教育を施す決心をしました。可能な限り丁寧に、専用の資料を作成し、迷わないように、かつ自立できるように努力しました。もともと僕は教育にかなり執着するタイプですが、もはや常軌を逸していたと思います。僕もシステム開発の作業者として参画していたのですが、定時までは新入社員のバックアップを最優先、わかるまでとことん付き合い、新入社員が退社したらようやく自分の作業に入る、大半がそんな一日だったと思います(まあ、教育者として当然とも言えますが)。僕が退職の話をした際、その新人が涙したときは大変感慨深いものがあったものです。

さて、すっかり話が逸れましたが、そんな後ろ髪引かれる思いで始めた転職活動ですが、まずはエージェントを使わず、転職サイトに幾つか登録し、情報収集を開始しました。そのときすでに新型コロナの影響もあり、Web による簡易面談を行う会社が増え始めました。ある日僕の経歴の興味を持った会社さんから簡易面談の申し入れがあったので、受けることにしました。会社の規模は当時の所属会社と同様、50人程度、中間層が薄いため、ベテランと若手の二極化しているとのことでした。僕はすぐに、何か大きな問題があって、30代層が大量に辞めたな、と感じました。これからはプライム案件(業務をユーザ企業、或いはサービス・プロバイダから直接請負うこと)を中心に受注して舵取りをする、とのことでした。

魅力的な業務を多く抱えているように思えたのですが、経営者が肌に合わないかもしれない、合わなかった場合また立場を失うのではないか、という懸念が頭を大きくよぎって離れませんでした。また、中小企業の経営者が強力なリーダシップを発揮して、それについていくという構造もイメージできず、大変おこがましい話ではありますが、経営者が僕より強烈に会社を成長させたいと思い行動を起こす、ということがどうしても想像できませんでした。僕が出会った、或いは所属した多くの経営者は自分の利益のみ執着するか、定年までやり過ごして多額の退職金を受け取ることにしか興味がなかったためです。(何度も繰り返しますが、実際はそうでないかもしれません。ただ、行動が伴わなくては何も考えていないのと同然です
かと言って、僕の学歴・経歴で大企業への転職は旗色が非常に悪く、現実的ではありません。

僕はそのとき不意に手詰まりになる感覚を覚えました。これはどこに行っても起こりうることなのではないか、自分だけ鼻息荒く周囲から疎ましく思われ、上司や役員には「肩の力を抜け」と言われ、それでも危機感だけはあるためひとりで責任の範疇を出て、報われない努力を続け、疲弊してまた転職を繰り返す。もし僕が経営者だとしても、会社の根本的な体質を見直しましょう、と言われて「はい、そうしましょう」とは言わないでしょう。例え正論でも自分の経営方針にケチをつけられたと思い、へそを曲げるはずです。

  1. 新進気鋭のベンチャ企業に転職して情熱を燃やす
  2. 会社員を辞めて独立 or 起業する

残った僕の選択肢は、これだけです。前者のような成長企業であれば経営者も若く、上記のような悩みが解消されることもできたでしょう。しかしながら前者を取るには僕は歳を取りすぎていました。新進気鋭の会社は特化した技術を持たない中年は必要としないものです。当然、大手なんかはじめから話になりません。

もうお分かりいただけたかと思います。僕には後者しかなかったのです。会社員のままでは、もう間違いなく経営者と対立は免れず、力関係上必ず敗北するでしょう。僕は後者を選択肢、自分の思い描くように働くことを決心しました。

独立の適正な時期とは

自分の経歴で転職可能な会社の中で、自分よりモチベーションの高い経営者がいると確信できない、或いは価値観を共有できる経営者を見つけられる自信がない場合

情けないことに僕は消去法でフリーランスになった少数派です。その後独立に向けて色々と調べていくうちに、フリーランスが性に合っていることに気付いていくことになるのですが、それはあくまで結果論です。そのへんのいきさつはまた機会があれば、ということで。

ABOUT ME
yo
フリーランス、システムエンジニア。

営業・販売、肉体労働などを経て 2007年から IT 業界に従事。文系出身かつ未経験者のため立上りに大変な時間と労力を要する。

新規システム開発を提案から設計・実装・保守・運用まですべての工程を担当する(実装は主にサーバサイド)。その傍ら、他業種・他職種の経験や上記立上りの経験を活かし、教育や業務標準化など、組織の育成に勤む。

私立大学現役合格、現役中退。基本情報・応用情報技術者取得、高度試験はモチベーション確保という観点から見送り。普通免許ゴールド保持者。

趣味は犬。